決算変更届

建設業許可を取得した後に必要な「決算変更届」とは?
建設業許可を取得すると、
「これで建設業許可の手続きは終わった」
と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、建設業許可は取得して終わりではありません。
許可を取得した後も、毎年、事業年度が終了するたびに行政庁へ「決算変更届」を提出する必要があります。
決算変更届は、建設業者がその1年間にどのような工事を行い、どのような財務状況だったのかなどを行政庁に報告するための重要な届出です。
神奈川県では、建設業許可を受けた事業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する必要があります。
この記事では、決算変更届とは何か、いつまでに提出するのか、どのような書類が必要なのか、提出しなかった場合の問題点などを分かりやすく解説します。
1.決算変更届とは?
決算変更届とは、建設業許可を取得している事業者が、毎事業年度の終了後に提出する決算に関する届出です。
建設業法では、許可を受けた建設業者に対して、事業年度終了後の届出を義務付けています。
一般的には、
「決算変更届」
と呼ばれています。
神奈川県では正式に「決算報告」とも表現されており、建設業許可を受けた事業者は、毎事業年度終了後4か月以内に工事経歴書や財務諸表などを提出する必要があります。
つまり、
建設業許可を取得
↓
1年間事業を行う
↓
決算を迎える
↓
4か月以内に決算変更届を提出
という流れになります。
2.決算変更届は毎年必要
決算変更届は、建設業許可の有効期間5年ごとに1回提出すればよいものではありません。
原則として、毎事業年度ごとに提出する必要があります。
例えば、法人の決算日が3月31日であれば、
3月31日 → 決算日
となります。
そこから4か月以内に決算変更届を提出します。
したがって、3月決算の会社であれば、原則として7月31日までが提出期限となります。
一方、9月30日決算の会社であれば、原則として翌年1月31日までです。
会社の決算期によって提出期限が変わるため、自社の決算日を基準に管理することが重要です。
3.決算変更届を提出する理由
「税務署に決算申告をしているのに、なぜ建設業許可でも決算書を提出するの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
決算変更届は、税務申告とは別の手続きです。
税務署等に提出する法人税・所得税の申告とは別に、建設業許可を受けている事業者は、建設業法に基づいて許可行政庁へ決算報告を行う必要があります。
行政庁は、決算変更届によって、
- どのような工事を施工したのか
- どれくらいの工事を請け負ったのか
- 財務状況はどうなっているのか
- 許可業種に関する工事実績はどうなっているのか
などを確認できるようになっています。
4.決算変更届はいつまでに提出する?
最も重要なのが提出期限です。
原則
事業年度終了後4か月以内
です。
これは建設業法に基づく期限です。
神奈川県の最新の建設業許可案内でも、毎事業年度終了後4か月以内の提出が必要とされています。
例えば
| 決算日 | 決算変更届の提出期限 |
|---|---|
| 3月31日 | 7月31日 |
| 6月30日 | 10月31日 |
| 9月30日 | 1月31日 |
| 12月31日 | 4月30日 |
※具体的な期限については、休日等の扱いを含め、提出先の最新の案内を確認してください。
5.決算変更届には何を提出する?
決算変更届では、単純に会社の決算書をコピーして提出するわけではありません。
建設業法で定められた様式に基づいて、建設業用の財務諸表などを作成します。
神奈川県の現行手引きでは、主な提出書類として次のものが挙げられています。
主な提出書類
- 変更届出書(決算報告)
- 工事経歴書
- 直前3年の工事施工金額
- 財務諸表
- 事業報告書
- 納税証明書
などです。
さらに、前回の決算変更届から一定の事項に変更があった場合には、
- 使用人数
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
- 定款の写し
- 健康保険等の加入状況
などの書類が必要となる場合があります。
6.工事経歴書とは?
決算変更届の中でも重要なのが、
工事経歴書(様式第2号)
です。
これは、事業年度中に施工した工事について記載する書類です。
例えば、
- 工事名称
- 工事場所
- 発注者
- 元請・下請の別
- 請負代金
- 工期
- 配置技術者
などについて、所定のルールに従って記載します。
工事経歴書は、単なる「工事実績一覧」ではありません。
記載方法には一定のルールがあるため、工事台帳や請負契約書などを確認しながら正確に作成することが重要です。
7.「直前3年の工事施工金額」とは?
決算変更届では、
「直前3年の各事業年度における工事施工金額」
も提出します。
これは、直近3年間について、
- 元請工事
- 下請工事
- 許可を受けた業種
- その他の工事
などの施工金額を整理して記載するものです。
建設業許可を取得した後、毎年どの程度の工事を行っているのかを確認するための重要な資料です。
8.財務諸表は税務申告用の決算書をそのまま出せばいい?
そのまま提出するわけではありません。
ここは非常に重要です。
税務申告で使用する決算書と、建設業許可の決算変更届に添付する財務諸表では、作成方法や勘定科目の区分などに違いがあります。
そのため、税理士が作成した決算書をもとに、
建設業法上の財務諸表へ組み替える作業
が必要になります。
法人の場合は、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 注記表
などを作成します。
個人事業主の場合も、建設業法に対応した財務諸表を作成します。
神奈川県では法人用・個人用それぞれの様式が指定されています。
9.納税証明書も必要
決算変更届では、納税証明書も提出します。
神奈川県知事許可の場合、法人は法人事業税、個人事業主は個人事業税の納税証明書が基本となります。
ここで注意したいのが、
「税金を払っていることが分かれば何でもいい」
というわけではないことです。
神奈川県の手引きでは、法人については県税事務所で取得する事業年度が記載された法人事業税の納税証明書が必要とされています。単なる「未納がない旨の証明書」ではありません。
10.決算変更届を提出しないとどうなる?
決算変更届は「提出してもしなくてもいい書類」ではありません。
建設業法上の義務です。
神奈川県も、決算変更届を提出しない場合には罰金刑等の対象となる場合があることを案内しています。さらに、経営事項審査を受けられず、公共工事等への参加に支障が生じることがあります。
したがって、
「忙しいから後で出そう」
と放置するのはおすすめできません。
11.決算変更届を何年も提出していない場合
建設業者の中には、
「許可を取った後、決算変更届を一度も出していなかった」
というケースがあります。
例えば5年間、一度も提出していなかった場合、
5年分の決算変更届を整理して提出する必要が生じる可能性があります。
ただし、具体的な必要書類や提出方法については、許可行政庁や未提出期間、過去の変更状況などによって確認が必要です。
神奈川県の場合も、未提出のまま放置せず、まず建設業課等に相談して、どの年度分が未提出なのかを整理することをおすすめします。
12.更新申請にも影響する
建設業許可の有効期間は原則として5年間です。
許可を更新する場合には、過去の決算変更届などの提出状況が問題になることがあります。
つまり、
毎年の決算変更届をきちんと提出することが、5年後の更新にもつながります。
「更新のときにまとめて出せばいい」と考えるのではなく、毎年の期限内に提出することが重要です。
13.経営事項審査を受ける会社は特に注意
公共工事の受注を目指している建設業者にとって、決算変更届は特に重要です。
経営事項審査(経審)を受ける場合には、決算変更届の内容が関係してきます。
神奈川県も、経営事項審査の申請に先立って、原則として建設業許可に係る決算変更届の提出が必要であることを案内しています。
また、決算変更届の内容に修正が必要となるケースもあるため、経審を予定している会社は、決算変更届の段階から正確に作成することが重要です。
14.決算変更届でよくある間違い
決算変更届では、次のようなミスに注意しましょう。
① 工事経歴書の業種を間違える
実際の工事内容と許可業種の整理が適切でないケースがあります。
② 工事金額の集計を間違える
工事経歴書と「直前3年の工事施工金額」の数字が合わないケースがあります。
③ 税務申告用の決算書をそのまま使う
建設業法用の財務諸表への組み替えが必要です。
④ 納税証明書の種類を間違える
提出先によって必要な税目・証明書が異なります。
⑤ 変更事項を見落とす
役員、営業所、使用人数、社会保険などに変更がある場合、決算変更届とは別に変更届が必要になることがあります。
15.決算変更届と「変更届」は別物
ここも混同しやすいポイントです。
決算変更届
→ 毎年の決算について報告する手続き
変更届
→ 会社名、役員、営業所、技術者など、許可申請時の内容に変更があった場合に行う手続き
です。
例えば、代表取締役が変更になった場合には、決算変更届を待つのではなく、変更内容に応じて定められた期限内に変更届を提出する必要があります。
神奈川県では、商号・名称や営業所の名称・所在地などについて30日以内、常勤役員等や専任技術者の交替について14日以内など、変更内容ごとに期限が定められています。
したがって、
「毎年決算変更届を出していれば、変更届は不要」
ということではありません。
16.決算変更届の提出までの流れ
決算変更届は、次のような流れで準備すると分かりやすいでしょう。
STEP1 決算を確定する
まず、会社または個人事業の決算を確定します。
STEP2 工事実績を整理する
その年度に行った工事について、
- 工事名
- 発注者
- 工事金額
- 工期
- 元請・下請
- 工事業種
などを整理します。
STEP3 建設業法用の財務諸表を作成する
税務申告用の決算書をもとに、建設業法に対応した財務諸表を作成します。
STEP4 納税証明書を取得する
必要な納税証明書を取得します。
STEP5 決算変更届を作成する
必要な様式を作成し、書類全体の数字や記載内容を確認します。
STEP6 許可行政庁へ提出する
事業年度終了後4か月以内に提出します。
神奈川県では、建設業許可申請と同じ提出先へ提出することとされています。
17.決算変更届は行政書士に依頼できる?
決算変更届は、行政書士が取り扱うことのできる行政手続きの一つです。
特に、
- 工事経歴書の作成
- 直前3年の工事施工金額の整理
- 建設業法用財務諸表の作成
- 納税証明書等の確認
- 決算変更届の作成・提出
など、毎年発生する手続きをまとめて依頼することができます。
税理士が税務上の決算を担当し、行政書士が建設業許可に関する決算変更届を担当するという役割分担も可能です。
18.まとめ
建設業許可を取得した後は、許可を維持するために毎年の手続きを適切に行う必要があります。
その中でも特に重要なのが、
「決算変更届」
です。
ポイントをまとめると、
- 決算変更届は建設業許可業者に必要な法定届出
- 毎事業年度終了後4か月以内に提出する
- 工事経歴書を作成する
- 直前3年の工事施工金額を提出する
- 建設業法に基づく財務諸表を作成する
- 納税証明書を添付する
- 変更事項がある場合は別途変更届が必要
- 未提出の場合、罰則や経審への影響が生じる場合がある
- 許可更新のためにも毎年きちんと提出することが重要
という点を押さえておきましょう。
建設業許可取得後の手続きもお任せください
建設業許可は、取得して終わりではありません。
毎年の決算変更届をはじめ、役員変更、営業所変更、専任技術者の変更、許可更新など、許可取得後にもさまざまな手続きがあります。
とのうち行政書士事務所では、建設業許可の新規取得だけでなく、決算変更届・各種変更届・更新申請など、許可取得後の継続的な手続きもサポートしています。
「決算変更届を毎年出しているけれど、書類作成が大変」
「何年か提出していない」
「税理士には決算を頼んでいるけれど、建設業の決算変更届までは対応してもらっていない」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
参考資料
神奈川県では、**令和8年度版「建設業許可申請の手引き」**の中に、許可取得後の手続きとして決算変更届の提出方法・必要書類等が掲載されています。実際に神奈川県知事許可の手続きを行う場合は、最新の手引きを確認することをおすすめします。
神奈川県「建設業許可申請の手引き及び申請書等のダウンロード」






