医療法人の決算届・事業報告書等|経営情報等報告と毎年必要な手続

医療法人では、毎会計年度の終了後、決算・税務申告を行うだけでなく、所轄庁への「事業報告書等」の届出と「経営情報等」の報告が必要です。
実務上、事業報告書等の届出を「医療法人の決算届」と呼ぶことがありますが、法令上は「事業報告書等」の届出として定められています。
また、2023年8月以降は、従来の事業報告書等とは別に、医療法人が開設する病院・診療所の経営情報等を報告する制度も開始されています。
そのため、
「税理士から決算書をもらったので、医療法人の手続はすべて終わった」
「事業報告書を出したので、経営情報等報告も終わっている」
とは限りません。
厚生労働省は、医療法人について、事業報告書等を毎会計年度終了後3か月以内に届け出るとともに、経営情報等についても原則として毎会計年度終了後3か月以内に報告することを求めています。外部監査の対象となる医療法人の経営情報等については4か月以内です。厚生労働省
とのうち行政書士事務所では、医療法人の決算後に必要となる行政手続について、決算書類や現在の法人状況を確認し、事業報告書等・経営情報等報告・役員変更・登記事項届など、必要な手続を整理してサポートします。
医療法人の決算後には2種類の報告があります
現在の医療法人制度では、決算後の行政手続として、特に**「事業報告書等」と「経営情報等」**を区別することが重要です。
| 項目 | 事業報告書等 | 経営情報等報告 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 医療法人の運営・財務状況等の届出 | 医療機関の経営実態等の把握 |
| 単位 | 医療法人単位 | 原則として病院・診療所単位 |
| 提出期限 | 会計年度終了後3か月以内 | 原則3か月以内 |
| 外部監査対象法人 | 原則3か月以内 | 4か月以内 |
| 主な内容 | 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書等 | 病院・診療所の収益・費用、人員等 |
| 電子報告 | MCDB利用可 | MCDB利用可 |
厚生労働省は現在、事業報告書等と経営情報等の双方について、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)を利用した報告を推進しています。厚生労働省
つまり、似ているように見えても別の制度です。
片方だけ提出して、もう一方が未提出にならないよう注意する必要があります。
医療法人の事業報告書等はいつまでに提出する?
医療法人は、毎会計年度終了後、2か月以内に事業報告書等を作成し、3か月以内に所轄庁へ届け出る必要があります。
神奈川県の医療法人運営の手引きでも、
会計年度終了後2か月以内に作成し、3か月以内に都道府県知事へ提出
という取扱いが明示されています。神奈川県庁
例えば、3月31日が会計年度末の医療法人であれば、通常は、
5月末までに事業報告書等を作成し、6月末までに届出を行う
というスケジュールになります。
12月決算法人であれば、原則として翌年3月末までが届出期限となります。
医療法人ごとに定款で会計年度が定められているため、まず自法人の会計年度末を確認することが重要です。
事業報告書等として提出する主な書類
神奈川県の現在の手引きでは、事業報告書等について、主に次の書類を提出することとされています。神奈川県庁
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 事業報告書 | 法人の活動状況等 |
| 財産目録 | 会計年度末時点の財産状況 |
| 貸借対照表 | 資産・負債・純資産の状況 |
| 損益計算書 | 会計年度の収益・費用等 |
| 関係事業者との取引に関する報告書 | 該当する取引がある場合 |
| 監事の監査報告書 | 監事による監査結果 |
| その他 | 法人の規模・種類等により追加書類あり |
医療法第51条第2項に該当する一定規模以上の医療法人については、公認会計士等の監査報告書、純資産変動計算書、附属明細表などが追加で必要となります。神奈川県庁
必要書類は法人の規模や事業内容によって異なるため、前年の提出控えだけをそのまま使うのではなく、毎年度最新の様式・制度を確認します。
事業報告書等は決算書を提出するだけではありません
「決算届」という呼び方から、貸借対照表や損益計算書を提出すればよいと思われることがあります。
しかし実際には、財務諸表だけではありません。
医療法人では、事業報告書等を作成した後、監事の監査、理事会や社員総会など所定の法人内部手続を経る必要があります。
神奈川県の手引きでは、医療法人は毎会計年度終了後2か月以内に事業報告書等を作成し、監事の監査、理事会・社員総会の承認等を経たうえで、3か月以内に所轄庁へ届け出る流れが示されています。神奈川県庁
そのため、
決算確定
→ 事業報告書等の作成
→ 監事監査
→ 法人内部手続
→ 所轄庁への届出
までを一連の手続として管理することが重要です。
経営情報等報告とは?
医療法人には、事業報告書等とは別に、医療法人が開設する病院・診療所の経営情報等を都道府県知事へ報告する義務があります。
この制度では、主として病院・診療所ごとに、
収益や費用の内容、職員の職種別人数、給与総額に関する一定の情報などを報告します。
厚生労働省は、これらの情報を医療提供体制に関する政策の企画・立案等に活用するため、データベースとして整備しています。厚生労働省
事業報告書等が「医療法人そのもの」の活動・財務状況を中心とするのに対し、経営情報等報告は、医療法人が開設する病院・診療所ごとの経営状況に重点が置かれている点が大きな違いです。
経営情報等報告の提出期限
経営情報等の報告期限は、原則として、
毎会計年度終了後3か月以内
です。
ただし、医療法上、公認会計士または監査法人による外部監査の対象となる医療法人については、
毎会計年度終了後4か月以内
となります。厚生労働省
例えば3月決算法人の場合、原則として6月末まで、外部監査対象法人については7月末までが報告期限の目安となります。
MCDBとは?
MCDBは、医療法人経営情報データベースシステムの略称です。
2026年9月現在、厚生労働省は、事業報告書等と経営情報等について、MCDBを利用したオンライン報告を推進しています。
MCDBでは、専用様式をダウンロードして入力後にアップロードする方法と、システム上で直接入力する方法が用意されています。厚生労働省
MCDBを利用するには、事前に医療法人IDの利用申請が必要です。
また、厚生労働省は、税理士・行政書士などの専門職専用のMCDB IDは発行していない一方、医療法人の管理の下で、専門職が医療法人のIDを使用して入力・報告することは可能と案内しています。厚生労働省
そのため、専門家へ手続を依頼する場合も、法人側でIDの管理状況を確認しておく必要があります。
毎年の医療法人届出をまとめて整理したい方へ
「税理士から決算書は受け取ったが、その後何を提出すればよいかわからない」
「事業報告書等は提出したが、経営情報等報告をしているかわからない」
「MCDBの操作方法がわからない」
「役員変更や登記事項届も必要なのか確認したい」
といった場合もご相談いただけます。
とのうち行政書士事務所では、決算書類、定款、登記事項、役員構成、前年の届出状況等を確認し、その年度に必要となる医療法人の行政手続を整理します。
税理士の決算・税務申告と医療法人の届出は別です
医療法人の決算時には、税理士へ会計・税務を依頼している法人も多くあります。
税理士が作成・確認した貸借対照表、損益計算書、税務申告書等は、事業報告書等や経営情報等の作成にも重要な基礎資料となります。
ただし、
法人税等の税務申告と、
医療法に基づく行政庁への届出・報告
は別の手続です。
そのため、
「税務申告が終わった=医療法人としての行政手続も終了した」
とは限りません。
当事務所では、税理士が確定した決算書類・会計資料等をご提供いただき、それを基に医療法人の行政手続に必要な書類を整備する形で対応します。
税務相談、税額計算、税務申告は税理士の業務ですので、必要に応じて既存の顧問税理士等と連携して進めます。
決算後は役員の任期も確認します
医療法人の役員には任期があり、役員の任期は2年を超えることができません。
そのため、決算・定時社員総会の時期と役員改選の時期が重なる医療法人では、事業報告書等の届出と併せて、
役員の任期満了、理事・監事の重任、理事長の重任、役員変更届などを確認する必要があります。
役員変更については、
【医療法人の役員変更・理事長変更】もご覧ください。
決算後は資産の総額の変更登記も確認します
医療法人では、毎会計年度終了後、貸借対照表に基づいて資産の総額の変更登記が必要となります。
現在の制度では、資産の総額については毎会計年度終了後3か月以内に変更登記を行うこととされています。神奈川県の医療法人関係資料でも、資産の総額について毎会計年度終了後3か月以内に変更登記が必要とされています。神奈川県庁
登記が完了した後は、医療法人登記事項届を所轄庁へ提出する必要があります。
神奈川県では、資産総額の変更登記の場合、登記後遅滞なく、医療法人登記事項届と履歴事項全部証明書を提出する取扱いです。神奈川県庁
なお、法務局への登記申請代理は行政書士業務ではありません。登記申請が必要な場合には、司法書士等との連携が必要となります。
登記後の届出については、
【医療法人の登記完了届・各種変更届】もご覧ください。
医療法人の決算後に確認したい手続
決算後は「事業報告書だけ提出する」と考えるのではなく、法人の状況によって複数の手続を確認します。
| 確認事項 | 主な期限・タイミング |
|---|---|
| 事業報告書等の作成 | 会計年度終了後2か月以内 |
| 事業報告書等の届出 | 会計年度終了後3か月以内 |
| 経営情報等報告 | 原則3か月以内 |
| 外部監査対象法人の経営情報等報告 | 4か月以内 |
| 資産の総額の変更登記 | 会計年度終了後3か月以内 |
| 登記事項届 | 登記後遅滞なく |
| 役員変更届 | 役員変更後遅滞なく |
事業報告書等については神奈川県手引きが作成2か月・提出3か月を明示し、経営情報等の期限については厚生労働省が原則3か月、外部監査対象法人4か月と案内しています。神奈川県庁
法人によって該当する手続は異なりますので、毎年同じ届出だけを機械的に行うのではなく、その年に役員変更や登記事項変更等がなかったかも併せて確認します。
神奈川県の医療法人の場合
2026年9月現在、神奈川県は「医療法人運営の手引き(2025年4月版)」を公開しており、事業報告書等の提出方法や必要書類、各種様式を掲載しています。県の案内ページは2026年9月10日に更新されています。神奈川県庁
神奈川県の手引きでは、事業報告書等について、
会計年度終了後2か月以内に作成し、3か月以内に都道府県知事へ提出
とされています。神奈川県庁
また、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市が所管する医療法人については、それぞれの市が提出先となります。
したがって、神奈川県内の医療法人であっても、まず自法人の所轄庁を確認することが重要です。
医療法人の事業報告書等は毎年必要です
事業報告書等の届出は、医療法人を設立した後、毎年度継続して必要となる手続です。
「前年提出したから今年は不要」
「決算内容に大きな変更がないから不要」
というものではありません。
医療法人を適正に運営するためには、決算、税務申告だけでなく、医療法上の毎年の届出まで含めて期限管理することが重要です。
とのうち行政書士事務所のサポート
とのうち行政書士事務所では、医療法人から確定した決算資料等をご提供いただき、医療法人の状況に応じて、事業報告書等の作成・届出、経営情報等報告の支援、MCDBによる報告手続の支援、登記完了後の行政届出、役員変更等の確認を行います。
税務申告については顧問税理士等、登記申請については司法書士等と役割を分担しながら、医療法人として必要となる行政手続を整理します。
医療法人に関するその他のサポートについては、
【医療法人サポート】もご覧ください。
ご依頼の流れ
STEP 1 お問い合わせ
法人名、会計年度、所在地、現在の届出状況等をお知らせください。
前年までの届出状況がわからない場合も、その旨をお知らせください。
STEP 2 決算資料・法人資料の確認
確定した決算書、定款、登記事項証明書、前年度の届出控え等を確認します。
STEP 3 必要な手続を整理
事業報告書等、経営情報等報告、登記事項届、役員変更届など、その年度に必要となる行政手続を確認します。
STEP 4 書類作成・MCDB等への入力準備
提供いただいた資料を基に、必要となる行政提出書類を整えます。
MCDBを利用する場合には、法人側の医療法人ID等の利用環境も確認します。
STEP 5 届出・報告
所轄庁またはMCDB等を利用して、必要な届出・報告を進めます。
よくあるご質問
Q.医療法人の「決算届」はいつまでですか?
一般に決算届と呼ばれる事業報告書等は、毎会計年度終了後2か月以内に作成し、3か月以内に所轄庁へ届け出る必要があります。神奈川県の現行手引きでも同じ期限が案内されています。神奈川県庁
Q.3月決算の場合はいつまでですか?
通常、事業報告書等は5月末までに作成し、6月末までに届け出ることになります。
経営情報等報告も原則として6月末までです。外部監査対象医療法人については、経営情報等の報告期限は7月末までとなります。厚生労働省
Q.事業報告書等と経営情報等報告は同じ手続ですか?
いいえ。別の手続です。
事業報告書等は医療法人単位の活動・財務状況等を報告するもので、経営情報等報告は主として医療法人が開設する病院・診療所単位の経営情報を報告する制度です。厚生労働省
Q.税理士に決算を依頼していれば、事業報告書等も提出されていますか?
必ずしもそうとは限りません。
税務申告と医療法上の行政届出は別の手続です。顧問税理士へ、事業報告書等・経営情報等報告まで対応しているか確認することをおすすめします。
Q.MCDBで事業報告書等も提出できますか?
はい。厚生労働省は現在、事業報告書等と経営情報等の双方についてMCDBを利用したオンライン報告を推進しています。利用には事前の医療法人IDの申請が必要です。厚生労働省
Q.行政書士がMCDBの手続を行うことはできますか?
厚生労働省は、専門職専用のIDは設けていませんが、医療法人の管理の下で、専門職が医療法人のIDを使って入力・報告することは可能と案内しています。厚生労働省
実際の対応にあたっては、医療法人からの依頼・権限確認とID等の適切な管理を行ったうえで進めます。
Q.期限を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか?
未提出のまま放置せず、速やかに所轄庁へ確認して提出手続を進めることが重要です。
過年度分についても、まずどの年度が未提出なのか、決算書類や過去の届出控えから整理します。
医療法人の毎年の手続をまとめて管理したい方へ
医療法人では、毎年の決算後に、
事業報告書等、経営情報等報告、資産の総額の変更登記、登記事項届、役員任期の確認
など、複数の手続が重なることがあります。
「税理士から決算書を受け取ったが、この後の手続がわからない」
「前年まで誰が届出をしていたかわからない」
「MCDBが始まってから手続がよくわからなくなった」
「決算届だけでなく役員変更もまとめて確認したい」
という場合には、法人の現在の状況を確認して必要な手続を整理します。
